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第四章「一般編」
72話「ウルのやる気がでた」
『なるほど、リサ先輩が攫われる現場に偶然居合わせたのか』
『うむ。このビルへ向かう途中で偶然出会ってな。車で一緒に来る事になったのだが、その途中で襲撃を受けた』
クロ達はその場でリサ先輩を助けようとしたらしいが、相手は普通の人間だったので正体を明かさないよう努めたらしい。
かわりにリンはリサ先輩を守る為にわざと捕まり、シロは現在上空から追跡しているそうだ。
ちなみに、相手は襲撃時に爆薬や銃器も使用していたそうだが、クロとシロがバレないように護衛の人たちを守っていたため軽傷で済んだらしい。
護衛の人達が無事だったのはクロ達のお陰だったんだな。
『というか場所がわかるならすぐに向かおう!リンも捕まってるならなおさら心配だ』
『いや、逆にシロとリンが付いていればそう心配することもないと思うぞ。相手は手練れだが、異能者でも術師でもなかった。他に仲間がいるとしても問題ない筈だ』
『それでも…いや、確かにそうか』
シロは判断力に優れてるし、リンの斬撃はぶっ飛んでる。相手が並みの異能者や術師でも勝てるはずだ。むしろ相手が心配かも。
『シロとリンは強い。特に、限定的な条件ならリンは儂にも匹敵するほどだ』
『え、そうなの?』
状況にもよるらしいが、リンはこのコピー能力猫妖怪にも迫る強さらしい。
たしかに、つどーむやビルを破壊って化け物じみた能力がないと無理か。
『とりあえず場所は教えてくれ。大丈夫だとしても何があるか分からないし』
『うむ、もうすぐ伝令役のカラスが来る予定なのだが…』
『シロサンヲ見ツケマシタ。ココカラ15km先ヲ北上中、目標車両ノ後方20mノ位置カラ追跡シテイルヨウデス』
カラスを待つまでも無くニアが見つけたてくれた。
利用意図が不明なのになぜか高解像度のカメラが備えられている人工衛星を見つけたので、それをハッキングしてシロを見つけたらしい。すごいなニア。
『ソレト、彼ラノ仲間ト思ワレル一団ガ、同盟者デアルヤヨイサンノトコロへ向カッテイルヨウデス』
『やよいさんも狙われてるのか』
『人質を陽動に使い、続けざまに別の地点を襲撃するつもりか。2点に戦力を割くとは、中々に思い切った戦略だな』
『イエ、3点デス。仲間ノ1人ガ、コノビルニ向カッテキテイマス』
『マジか』
こちらの戦力が一番集中しているところへ単身で乗り込んできたのか。なるほど、何らかの能力者である可能性が高いな。
もしかするとリサ先輩の所ややよいさんの所へ向かった連中にも能力者が居るかもしれない。リサ先輩の所にはリンとシロが居るとはいえ、相性が悪い相手だと危険だな。
「だからと言ってここを抜けるのも危険か、単身で乗り込んで来るってことは一番の実力者かも知れない…」
「結城さん、何を考え込んでるんですか?」
疑問を投げかけてきたソージの顔を見る。そうか、ソージも居るしディエスもいるのか。それに俺とクロとニアと最近静かなウル。
戦力は結構豊富だな。
『霊力糸、勝手に接続!』
「うわっ!頭の中に結城さんの声が!」
「なんすかこれ!?」
『落ち着いてくれ、これなら声を出さずに会話できる。頭の中で念じるように言えば話せるよ』
『こうですか?』
『おお、便利な能力っすね』
急に声をあげたソージとディエスが周囲から怪訝な目で見られたが、なんとか誤魔化しつつ霊力糸でクロとニアから教えてもらった情報を2人にも共有した。
紅さんの指揮のもと進んでいく会議とは別に、霊力糸を通して能力者組の会議を進めていく。
『敵は3ヶ所っすか、最大戦力らしき相手が向かってきているのは気がかりっすけど…自分は防衛より制圧が得意なんでリサさんの所行くのが向いてると思うっす』
『俺は、世話になってるやよいさんが心配です』
『そうか、それじゃあここの防衛は俺が担当する。俺の仲間も居るから、協力して制圧しよう』
ソージとディエスにクロとニアとウルを紹介した。2人ともニアとウルの存在には特に驚いていたが、すぐに打ち解けてくれたので問題はなさそうだ。
『ディエスはシロとリンには会ってるもんな。すでに現場に居るはずだから協力してリサ先輩を救出してくれ』
『あの白いカラスと幼女っすね。了解、協力本当に感謝するっす』
『僕タチハソージサンニツイテイキマス。ヨロシクオ願イシマス』
『よろしく〜…』
『ああ、こちらこそお願いします』
話し合いの結果、ソージにはニアとウルと協力してもらい、ディエスには現地にいるシロとリンと協力してもらう事になった。ここに残るのは俺とクロだ。
クロと一緒なら敵の最大戦力らしき相手でも対処できる自信はある。
『さてと、ウル、今の話ちゃんと聞いてたか?』
『聞いてたよ〜…』
今日も元気がないな、最近ずっとこの調子だ。ニアが大丈夫と言うので組ませたのだが、本当に大丈夫か?
『ウルサン、実ハ今朝、問イ合ワセニ対スル返信ガアリマシテ…復活ノ可能性ガ見エテキマシタ』
『え、ニアっちそれほんと!?』
『本当デス。家ニ帰ッテカラモウ一度連絡シテミルツモリデス』
『早く帰ろ!ご主人様!早く帰ろう!』
『急にどうしたウル?』
『マスターノバイトガ終ワルマデハ帰レマセンヨ。僕タチガソージサント一緒ニ敵ヲ倒セバ、早ク帰レルカモ知レマセン』
『敵?どこ?早く倒そ!ボッコボコにしよ!』
よく分からないが、ウルのやる気が出たようだ。
ウルが居れば四重結界が使えるので防衛力は上がるのだが、ニアと密かに練習していたコンビ技があるらしいのであえて組ませた形だ。
まだ改良中のようだが、対人戦には充分通用するコンビ技らしい。
『それじゃあ始めるか、ニア』
『了解、メールヲ送信シマシタ』
ニアに差出人が蛭害になるよう偽装したメールを紅さん宛てで送ってもらった。
リサ先輩の囚われている場所へディエス1人で来るよう挑発する文章と、やよいさんも狙う事を示唆する内容のメールだ。
「これは…」
「どうされたんですか?」
「蛭害から連絡がきたわ…ディエス、ちょっといいかしら」
紅さんには少し悪いが、作戦の第一段階は成功したみたいだな。
ディエスは単身でリサ先輩の救出へ向かう事になり、ソージは紅さんの護衛と共にヤヨイさんの所へ向かう事になった。
「ロイド以外の精鋭部隊もディエスの支援に向かいなさい。ディエス1人で来るよう指示があるから、絶対に気取られてはダメよ」
「了解!」
初老黒服さんを含めた精鋭部隊の6人も後続としてリサ先輩の所へ向かうようだ。やっぱりディエス1人には任せないよな。
『大丈夫っす。異能者や術師が何人いようと、後続の6人が突入してくる前に片付けるんで』
霊力糸を通してディエスがそう伝えてきた。
後続の突入前に殲滅って…相手にもよると思うけど、たしかにこいつならできそうだな。今回は味方で良かった。
「それでは行動を開始しなさい」
紅さんの指示を合図に、それぞれの目的のため俺たちも動き出すのだった。
今回も会話ばかりの回なので、少しでも楽しんでいただけたらと思いまして少々フラグを散りばめております。
ウルが元気なかった件については近いうちに。人工衛星については、まだ先の回収になるかもです…。
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